フィレンツェ完全ガイド|初めてでも分かる街歩き・食・近郊旅

フィレンツェ

はじめに:芸術と美食の都、フィレンツェへ

ルネサンスの光がいまも街を照らすフィレンツェ。
トスカーナの丘に抱かれたこの街は、どこを歩いても絵になる“生きた美術館”です。

初めて訪れたとき、私は駅前の石畳に足を踏み入れた瞬間、まるで中世の世界に迷い込んだような感覚に包まれました。
赤茶色の屋根、鐘の音、そして漂うエスプレッソの香り。
ここは、芸術・歴史・食文化がすべて融合した、イタリアの心そのものなのです。

目次

フィレンツェの主要な見どころ

フィレンツェのドゥオーモ

ドゥオーモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)

街の中心にそびえるドゥオーモは、フィレンツェの象徴。
ブルネレスキ設計の大ドーム、ジョットの鐘楼、そして洗礼堂の黄金の扉。
街の中心にそびえるドゥオーモは、フィレンツェの象徴。
ブルネレスキ設計の大ドーム、ジョットの鐘楼、そして洗礼堂の黄金の扉。
近くで見上げると圧倒される美しさですが、クーポラ(大聖堂のドーム部分)にも登ることができます。
階段を約460段登ると、フィレンツェの赤い屋根が一望できる絶景が広がり、
ドーム内部ではジョルジョ・ヴァザーリによる《最後の審判》のフレスコ画を間近に見ることもできます。

💡 ワンポイント

  • 入場チケットは「Brunelleschi Pass」など、共通チケット制(事前予約推奨)
  • 人気時間帯(午前10時〜午後2時)は行列ができるため、朝早めの訪問がおすすめ

シニョーリア広場(Piazza della Signoria)

政治と芸術の中心だったこの広場は、フィレンツェの“心臓”と呼ばれます。
ヴェッキオ宮殿、ミケランジェロのダヴィデ像(レプリカ)、そしてロッジア・デイ・ランツィ。
広場に立つと、数世紀にわたる歴史の重みを肌で感じられます。
夜はライトアップされ、まるで劇場のような幻想的な雰囲気に。


ポンテ・ヴェッキオ(Ponte Vecchio)

アルノ川にかかる「黄金の橋」。
中世から宝飾店が並び、恋人たちの聖地としても有名です。
夕暮れ時、川面に映るオレンジ色の光は、人生で一度は見てほしい絶景。
橋の上から見るアルノ川の流れは、まるで時間さえゆっくりと流れているかのよう。


ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)

ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》《春(プリマヴェーラ)》をはじめ、
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロなどルネサンスの巨匠たちの名画が集結。
事前予約が必須ですが、午前中の早い時間がおすすめです。
人の少ない館内で絵と“対話”する時間は、まさに贅沢そのもの。


サン・ロレンツォ教会とメディチ家礼拝堂

ルネサンス期、フィレンツェを支配した名門・メディチ家の教会。
中の礼拝堂にはミケランジェロ設計の装飾や、荘厳な大理石の彫刻群が並びます。
隣接するサン・ロレンツォ市場では、革製品やトリッパの屋台も。
芸術と庶民の活気が同居する、フィレンツェらしいエリアです。


サント・スピリト地区(Santo Spirito)

アルノ川を渡った“オルトラルノ地区”の中心で、地元民に愛されるエリア。
小さなバール、ワインバー、工房が立ち並び、昼も夜も人で賑わいます。
週末のマーケットや夜のテラス席は、観光地では味わえないリアルなフィレンツェを感じられる場所。


ミケランジェロ広場(Piazzale Michelangelo)

フィレンツェの全景を見渡せる丘の上の展望台。
夕方に登れば、赤い屋根とアルノ川、そして沈む夕日が黄金に染まる瞬間に出会えます。
この景色を見て、誰もが思うでしょう。
「フィレンツェは“世界一美しい街”かもしれない」と。

ミケランジェロ広場からの景色

中部イタリアの見どころガイド

フィレンツェの食文化:肉と内臓と庶民の味

ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(Bistecca alla Fiorentina)

フィレンツェを代表する肉料理。
骨付きTボーンステーキを炭火で豪快に焼き上げ、外は香ばしく中はレア。
塩とオリーブオイルだけのシンプルな味付けで、肉の旨味を堪能できます。
一人では食べきれないボリュームなので、数人でシェアするのがおすすめ。

👉 おすすめ店
Trattoria Dall’Oste(トラットリア・ダル・オステ)
駅近でアクセス抜群、熟成ビーフの厚切りビステッカが名物。
予約必須の人気店です。


トリッパとランプレドット(Trippa & Lampredotto)

トリッパ(牛の胃袋)は、煮込み料理としてトスカーナ地方の伝統。
特に「ランプレドット」は屋台料理として有名で、スパイスと香味野菜でじっくり煮込んだフィレンツェのソウルフード。

👉 おすすめ店
All’Antico Vinaio(オール・アンティーコ・ヴィナイオ)
名物サンドイッチ店。行列必至ですが、ボリューム満点で地元客も観光客も大満足。
パンの間にランプレドットやトリッパを挟んだ一品は、まさに“庶民の味”。

ピッツァと庶民派の味

👉 おすすめ店

Pizzeria Spela(ピッツェリア・スペーラ)は地元でも知られる名店。
もちもちの生地と香ばしい焼き上がりが絶妙で、観光の合間にぴったり。
ワインと一緒に気軽に立ち寄りたい、地元愛あふれるピッツェリアです。

公式ホームページ

駅からの行き方・移動ガイド

フィレンツェ観光は1日でも楽しめる

フィレンツェは街全体がコンパクトで、主要な見どころの多くが徒歩圏内にあります。
ドゥオーモ、ウフィツィ美術館、ポンテ・ヴェッキオ、ミケランジェロ広場も、
うまく回れば1日でも主要スポットを巡ることが可能です。

もちろん、じっくり美術館を巡ったり、街歩きやグルメを楽しむなら2〜3日が理想。
ただ「イタリア周遊の中で1日立ち寄る」程度でも、十分にフィレンツェの魅力を体感できます。

サンタ・マリア・ノヴェッラ駅からドゥオーモまで

徒歩で約10〜15分。
駅を出て「Via Panzani(パンツァーニ通り)」を直進すると、自然とドゥオーモの大聖堂が見えてきます。
途中にはカフェやジェラート店も多く、散策気分で歩くのが楽しいルートです。

サンタ・マリア・ノヴェッラ駅からミケランジェロ広場へ

徒歩では約30〜40分。
体力に自信がある方は、アルノ川沿いを歩いて橋を渡り、丘を登っていくのもおすすめ。
ただし坂道が続くため、バス(12番または13番)を利用するのが一般的です。
駅前のバス停から「Piazzale Michelangelo」行きに乗車し、約20分で到着します。

トラムの乗り方

フィレンツェのトラムはシンプルで旅行者にもわかりやすい交通手段。
券売機でチケットを購入(1回90分有効で約€1.70)。
乗車後は車内のオレンジ色の機械で“打刻(バリデーション)”を忘れずに。
主要路線T1・T2を使えば、空港や郊外ショッピングモールにも簡単にアクセス可能です。

フィレンツェのバスの乗り方と切符の買い方

フィレンツェ市内では、ATAF社(アタフ)が運営するオレンジ色や白いバスが主要交通。
中心地からミケランジェロ広場・住宅地・郊外のショッピングエリアへ行く際に便利です。

🎫 バスの切符の買い方(チケット購入方法)

① タバッキ(Tabacchi)で購入

街中の青い「T」のマークがある売店で購入できます。
「Un biglietto per l’autobus(ウン・ビリエット・ペル・ラウトブス)=バスの切符を1枚ください」と言えばOK。
※「2枚ください」は「Due biglietti, per favore(ドゥエ・ビリエッティ・ペル・ファヴォーレ)」

② 駅・トラム停留所の券売機で購入

サンタ・マリア・ノヴェッラ駅や主要停留所には自動券売機があります。
英語表示もあり、硬貨・カードの両方が利用可能です。

③ モバイルアプリ「TABNET」や「Dropticket」で購入

スマートフォンアプリから電子チケットを購入することも可能。
アクティベート(利用開始)ボタンを押してから90分間有効。
現地在住者もよく使う便利な方法です。

⏱ 有効時間と料金の目安

  • 料金:1回券 約€1.70(90分間有効)
  • 車内購入:運転手からも買えますが €2.50 と少し割高&現金のみ。

✅ 乗車時の注意点(バリデーション)

切符を買っただけでは“未使用扱い”です。
乗車したらすぐ、車内の黄色またはオレンジ色の機械に差し込んで刻印(バリデーション)を行う必要があります。
これを忘れると、検札時に罰金(€50〜)を科せられることもあるので要注意。

モバイルチケットの場合は「アクティベート(利用開始)」を押すのが刻印代わりです。

💡 旅行者向けワンポイント

  • 90分券でバス・トラム共通利用可能(途中で乗り換え可)
  • 1日乗車券(€4.50)もあり、観光に便利
  • 日曜・祝日は便数が減るので、帰りの時刻をチェックしておくと安心

📍豆知識
イタリアでは、バスも「乗る前に切符を用意しておく」のが基本。
日本のように後払いではなく、前払い+刻印制なので注意しましょう。

フィレンツェからの近郊旅行おすすめ

ピサ

ピサ(Pisa)

誰もが一度は見たことのある「ピサの斜塔」で知られる街。
実際に訪れると、斜塔だけでなくその周囲のドゥオーモ広場(奇跡の広場)全体が荘厳な美しさに包まれています。
白い大理石の建築群が太陽に照らされる姿はまさに芸術そのもの。

観光の中心はもちろん斜塔ですが、
時間に余裕があればアルノ川沿いの旧市街を散策するのもおすすめ。
フィレンツェからは電車で約1時間半とアクセスも良く、
日帰りで気軽に“トスカーナのもう一つの顔”を楽しめます。

ルッカ(Lucca)

城壁に囲まれた小さな街。
自転車で城壁の上をぐるっと一周するのが定番コース。
音楽家プッチーニの故郷としても有名で、静かな午後を過ごすのにぴったり。

シエナ(Siena)

フィレンツェからバスで約1時間半。
カンポ広場の美しい扇形の街並みと、世界遺産にも登録されたゴシックの街。
7月と8月に開催される伝統の競馬「パリオ」は圧巻です。

アレッツォ(Arezzo)

映画『ライフ・イズ・ビューティフル』の舞台にもなった街。
アンティーク市や地元アートが盛んで、フィレンツェよりも落ち着いた雰囲気。
地元食材を使ったトスカーナ料理が豊富で、グルメ旅にもおすすめ。

サン・ジミニャーノ(San Gimignano)

サンジミジャーノ

“塔の町”として知られる中世都市。
ワイン「ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ」と
世界一と称されるジェラート店「Dondoli」で知られます。
フィレンツェから日帰りで行ける絶景スポットのひとつ。

フィレンツェから近郊都市へのアクセス・所要時間ガイド

行き先主な交通手段所要時間(片道)備考・ポイント
ルッカ(Lucca)🚆鉄道(Trenitalia直通)約1時間20分〜1時間40分フィレンツェSMN駅からピサ方面行き列車に乗車。
1〜2時間ごとに運行。城壁の上を自転車で走るのが人気。
ピサ(Pisa)🚆鉄道(Trenitalia直通)約1時間〜1時間20分フィレンツェSMN駅からピサ中央駅へ直通列車でアクセス可。
斜塔やドゥオーモ広場の観光が人気。
アルノ川沿いの旧市街散策もおすすめ。
シエナ(Siena)🚌バス(Tiemme社)
または鉄道
バス:約1時間15分〜1時間30分
鉄道:約1時間40分〜2時間
バスの方が早く便利(SMN駅前発)。
丘の上の街なのでバスが中心部近くまで行ける。
アレッツォ(Arezzo)🚆鉄道(Trenitalia/Regionale)約1時間日帰り旅行に最適。
1時間に1〜2本運行。アンティーク市や映画『ライフ・イズ・ビューティフル』の舞台でも有名。
サン・ジミニャーノ(San Gimignano)🚌鉄道+バス(乗り継ぎ)約1時間45分〜2時間半直通列車なし。
①フィレンツェ→ポッジボンシ(Poggibonsi)まで電車(約1時間)
②ポッジボンシ駅→サン・ジミニャーノ行きバス(約25〜40分)
中世の塔の街として人気。

🚉 出発駅とチケット購入のポイント

  • すべて フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅(Firenze S.M.N.) 発着
  • 切符は駅構内の自動券売機または Trenitalia公式サイト・アプリで購入可
  • 地域列車(Regionale)は予約不要・自由席制
  • バスは駅前の「BUSITALIA」または「Tiemme」カウンターで購入可能

💡 ワンポイントアドバイス

  • トスカーナの鉄道は遅延が日常茶飯事なので、時間には余裕を持って。
  • 日帰り観光なら「アレッツォ」または「シエナ」がおすすめ。
  • サン・ジミニャーノは帰りのバスが夕方以降少ないため、夕景を見たい場合は宿泊が安心。
  • ルッカはピサとセットで巡るルートが人気(ルッカ→ピサ→フィレンツェの周遊)。

フィレンツェへのアクセス|ローマ・ミラノからの旅プラン

フィレンツェはイタリア半島のちょうど中間に位置し、ローマやミラノからも高速鉄道(Frecciarossa/Italo)で簡単にアクセスできます。

🚅 ローマから

  • 所要時間:約1時間30分〜1時間45分
  • 発着駅:ローマ・テルミニ駅(Roma Termini)→ フィレンツェ・サンタマリアノヴェッラ駅(Firenze S.M.N.)
  • 運行間隔:30分ごとに出発(Italo/Trenitaliaともに)
    朝ローマを出れば、昼前にはフィレンツェ観光をスタート可能。
    日帰り旅も十分現実的です。

🚄 ミラノから

  • 所要時間:約1時間55分〜2時間
  • 発着駅:ミラノ・チェントラーレ駅(Milano Centrale)→ フィレンツェS.M.N.
    北から南へ走る路線で、ボローニャ経由。
    朝出発して午後にはウフィツィ美術館を見られるプランが人気です。

旅のヒント:フィレンツェを“感じる”ために

  • 朝の街歩きが美しい:観光客が動き出す前の午前8時頃、ドゥオーモ周辺はまるで別世界。
  • 午後のシエスタタイムに注意:14〜16時はお店が閉まることが多いので計画的に。
  • 夜のアルノ川沿いはロマンチック:夕日を見ながら散歩すれば、きっとこの街が好きになる。

まとめ:一度訪れたら、何度でも帰りたくなる街

フィレンツェは、単なる観光地ではなく“体験の街”です。
芸術、料理、人、空気、そのすべてが深く心に残ります。

初めて訪れる人も、再訪する人も、
歩くたびに新しい発見がある――それがこの街の魅力。

夕暮れのミケランジェロ広場で街を見渡すとき、
きっとあなたも感じるはずです。

「ああ、イタリアを愛してしまった」と。

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この記事を書いた人

イタリア車と暮らし、イタリアで学んだ“美しい生き方”を伝える。イタリア車オーナー歴15年以上。
アルファロメオやフィアットなどのデザインと走りに魅了され、
日常の中で“イタリア流の情熱”を体感してきました。
内装メンテナンスや電装品補修など、DIY整備も自ら行う実践派。
イタリア・フィレンツェに3年間留学。
芸術・デザイン・食文化を学び、現地のライフスタイルを肌で吸収。情報サイト「SOLENTIA」の記事を執筆。
現地での経験と長年のオーナー視点をもとに、
“本場の美学とリアルなイタリアの空気”を伝えている。

SOLENTIAとは

SOLENTIA(ソレンティア)は、
イタリア語の「Sole(太陽)」と、
「Essentia(本質)」を組み合わせた造語です。

“太陽の本質”“光のエッセンス”という意味を込めて、
イタリアの情熱・温かさ・そして生きる歓びを象徴しています。

イタリア車に乗り、イタリア料理を味わい、
ときにはイタリアを旅する——
そんな“日本にいながらイタリアを生きる”ライフスタイルをテーマに、
SOLENTIAは、クルマ・美食・旅を通じて
日常に「イタリアの光」を届けるメディアです。

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