「アルファロメオに乗る人って、ちょっと変わってるよね。」
そんな言葉を、オーナーたちは何度も聞いてきた。
壊れるとか、維持費が高いとか、気難しいとか──
そんなイメージばかりが先行するアルファロメオ。
それでも、この車に魅せられた人たちは、なぜか離れられない。
彼らは合理性ではなく、情熱と感情で車を選ぶ人たちだ。
「アルファロメオに乗る人=アルフィスタ」と呼ばれるその世界には、
ちょっとクセがあり、でもどこか人間らしい“熱”がある。
この記事では、そんなアルファロメオオーナーたちの素顔、
そして“変人”と呼ばれても乗り続ける理由を探っていく。
はじめに|なぜアルファロメオのオーナーは“特別視”されるのか
アルファロメオに乗る人は、よく「変人」「金持ち」「気持ち悪い」などと冗談交じりに言われる。
しかし、実際にステアリングを握ってみれば、それが単なる誤解だと気づく。
彼らは“普通の人”ではないかもしれないが、“特別な情熱”を持っている。
日本では数少ないマイノリティな存在──
それが「アルファロメオに乗る人=アルフィスタ(Alfista)」だ。
アルファロメオに乗る人たちの共通点|“理屈ではない”愛情
アルファロメオに乗る人に共通しているのは、理屈ではなく感情で車を選ぶということ。
スペックや燃費、リセールバリューではなく、「走ることそのもの」に価値を感じている。
カタログの数値で語れない“鼓動”や“匂い”を求めているのだ。
あるオーナーはこう話す。
「アルファは車じゃなくて、人生のスパイスみたいなもの。たまに壊れるけど、それも含めて愛しい。」
まるで“オヤジの不健康自慢”のように、
「またエンジンチェックが点いた」「でも直すと絶好調」などと笑い合う。
それを中毒のように楽しんでいる姿は、まさに“蛇の毒(ビショーネ)”にやられた人たち。
“変人”と呼ばれる理由|人と同じじゃつまらない
アルファロメオに乗る人が“変人”と言われるのは、
日本の車社会が「合理性」と「平均値」で成り立っているからだ。
燃費が良くて、壊れず、維持費が安い──
そんな“正しさ”を求める中で、アルファロメオは異端だ。
しかし彼らは、その異端を誇りに思っている。
「みんながトヨタに乗るなら、俺はアルファでいい」
「人と同じじゃつまらない」
そう語るオーナーたちは、ある意味で“反骨の美学”を持っている。
だからこそ、アルファ乗りのコミュニティは妙に熱く、仲間意識も強い。
アルフィスタたちの世界|マイノリティだからこその絆
アルファロメオのオーナー同士は、不思議とすぐに打ち解ける。
すれ違いざまに手を振り合い、信号待ちで会話が始まることも珍しくない。
全国では「女神湖ミーティング」「La Storia Speciale 」「リアビア」「ラブロメ」など、
アルファロメオオンリーのオフ会が定期的に開催されており、
そこには老若男女、クラシック乗りから現行車オーナーまでが集う。
彼らは車を見せ合うだけでなく、人生を語り合う。
「30年以上前からずっと同じ75に乗ってる」
「ジュリエッタが好きすぎて手放せない」
そんな“狂気と愛情”が入り混じった空間こそ、アルフィスタの世界だ。
アルファロメオに乗る人は“金持ち”なのか?
「アルファに乗ってる人は金持ち」──これもよくある誤解だ。
実際のところ、アルファロメオは中古車市場では意外と手の届く価格帯にある。
初代ミトや147、159あたりは100万円以下で状態の良い車が手に入る。
ただし、維持に手間をかける余裕(時間・情熱)がある人が多いのは事実。
その意味で、金銭的な余裕よりも精神的なゆとりが求められる車だ。
“お金持ち”ではなく、“手間を惜しまない人”が乗っている。
それがアルファロメオというブランドの本質だ。
アルファロメオの維持費・修理・燃費事情|“愛情コスト”をどう受け止めるか
アルファロメオと聞くと、「維持費が高い」「すぐ壊れる」と言われがちだ。
確かに、国産車に比べれば部品代や工賃は高く、燃費も決して良くはない。
だが、実際にオーナーに話を聞くと、“壊れるから嫌”ではなく、“手をかけるのが楽しい”と感じている人が多い。
例えば、センサーなどの消耗品を定期的に交換していれば、致命的な故障は意外と少ない。
セレスピードや電子系トラブルも、専門店で早めに対処すれば長く乗り続けられる。
燃費は街乗りで10km/L前後、高速では13〜14km/Lと、実用的な範囲に収まる。
結局のところ、アルファロメオの維持費は“愛情のコスト”だ。
この車を「道具」としてではなく、「相棒」として扱う人にとっては、
その出費すらも楽しみの一部になっている。
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世代で異なるアルフィスタたち

アルファロメオに乗る人といっても、世代や車種でまったく違う。
- 105系・115系クラシック系:古典のようなデザインと官能的なサウンドに惚れ込む往年のオーナー。
- 90年代ネオクラ系(156・147・155・164・GTVなど):電子制御が入り始めた“アナログ最後の時代”を愛する層。
- ジュリエッタ/ミト派:デザイン性・扱いやすさで女性や若い層にも人気。
- 現行モデル(4C・ジュリア・ステルビオ・トナーレ・ジュニア):現代技術とアルファ魂の融合を求める新世代。
それぞれの世代が互いをリスペクトしながら、
「どのアルファもアルファらしい」と語り合う姿が印象的だ。
アルファロメオに乗る人が“気持ち悪い”と言われるワケ
アルファ乗りが“気持ち悪い”と言われるのは、
彼らが「車を愛しすぎている」からだ。
ボンネットを開けてエンジンルームを磨き、
オイルの匂いにうっとりし、
車と会話しているような感覚になる。
その熱量が“狂気”にも見えるのだろう。
しかし本人たちは大真面目で、車を恋人や家族のように扱っている。
「このエンジン音を聞くために、今日も仕事を頑張る」
そんな言葉が出るあたり、まさに“中毒者”の世界だ。
なぜアルファロメオを選ぶのか?|ドイツ車や国産車とは違う“感性の一台”
多くのアルフィスタが口を揃えて言うのは、
「スペックで選ぶならドイツ車、心で選ぶならアルファロメオ」という言葉。
同じスポーティカーでも、アルファにはどこか“人の温度”がある。
ポルシェが精密機械だとすれば、アルファロメオは感情で動く芸術品だ。
アクセルを踏み込んだときの音、ステアリングの重さ、内装の匂い──
どれも理屈ではなく“感覚”に訴えてくる。
国産車のような安心感や、ドイツ車のような完璧さはない。
でもその「不完全さ」こそが、人を惹きつける。
乗るたびに気分が変わり、気まぐれで、時に扱いづらい。
けれど、それこそがイタリア車の魅力であり、
アルファロメオを選ぶ人たちが“変人”と呼ばれてもやめられない理由だ。
アルフィスタの魅力|変人であることの誇り
アルファロメオに乗る人は、
「壊れると言われてもやめられない」「直してでも乗り続けたい」と口を揃える。
その理由は単純だ。
“他の車では味わえない感情”がそこにあるから。
ステアリングを握るたびに感じる鼓動、
街角で同じエンブレムを見つけた時の高揚感、
そして、エンジンがかかった瞬間の“生き物のような音”。
それらが、彼らにとっての人生の彩りであり、存在証明なのだ。
だから、周囲に何を言われようが構わない。
「変人で結構。だってこれが俺たちのアルファだから。」
不動になり、積車に乗せられて運ばれる姿でさえ、アルフィスタはどこか誇らしげだ。
通りすがりの人には「壊れた車」と映るかもしれないが、彼らにとってはそれも“アルファの一部”。
ボンネットの下で眠る機械を見つめながら、
「また手をかけて蘇らせよう」と微笑む――
アルファロメオとは、完璧に動いている時だけが美しいわけではない。
止まっていても、積車の上でも、そのシルエットに見とれる。
そしてアルフィスタは言う。
「たとえ不動でも、俺の車はカッコいいんだ。」
まとめ|“理解されない”ことが、誇りになる
アルファロメオに乗る人たちは、決して合理的ではない。
けれどもその“非合理さ”の中に、
機械と心が通じ合う瞬間を感じている。
アルファロメオとは、乗る人を選ぶ車。
いや──乗る人が、自分でこの車を選ぶのだ。
彼らは今日も言う。
「壊れる? そんなのわかってる。
でも、一度この音を知ったら、もう他の車には戻れない。」
それが、アルフィスタという生き方。
そして、変人と呼ばれても誇らしい理由だ。
