イタリア人は料理を“シェアしない”──ピッツァは1人1枚が原則。その理由と文化の違い

ピザ
目次

はじめに ── 「シェアしない国」イタリアへようこそ

日本では「いろいろ食べたいからシェアしよう!」が当たり前。
しかしイタリアでは、その感覚がまったく通じません。
特にピッツァやパスタは「自分の皿は自分のもの」という考え方が根づいており、
シェアする文化はほとんど存在しません。

イタリア人にとって「食事」は単なる食べる行為ではなく、“個人の時間”であり、“自分へのご褒美”なのです。

ピッツァは1人1枚が原則

イタリアのピッツェリアでは、メニューのほとんどが“個人サイズ”。
日本人の感覚だと「大きくない?」と思うかもしれませんが、
イタリア人にとってピッツァは前菜でもシェアメニューでもなく、“メインディッシュ”です。

基本ルールはこうです:

  • ピッツァは1人1枚(大人も子どもも関係なし)
  • 他人と半分こするのはマナー違反ではないが、一般的ではない
  • 味見をしたい時は「少し食べる?」と一切れ交換する程度

ちなみに、「1人1枚」とはいえボリュームはかなりあります。
ナポリピッツァは直径30センチ前後が一般的で、
最後まで食べきれない人も少なくありません。
その場合、イタリア人は“耳の部分だけを残す”こともあります。
生地の中の部分(モッツァレラやトマトがのった部分)を楽しみ、
満足したら自然にナイフとフォークを置く──それがごく普通の光景です。

いずれにしても、ピッツァを誰かとシェアするという発想はありません。
あくまで「自分の一皿」として向き合うのがイタリア流です。

イタリア人の友人に「日本ではピッツァをシェアする」と話すと、
驚かれてこう返されたことがあります。

「それはピッツァを“つまみ”にしてるの?食事じゃないの?」

イタリアでは“食事=一人ひとりが自分の皿で完結するもの”。
誰かとシェアする発想が、そもそも食の概念にないのです。

パスタもシェアしない

日本では、2人で行って「パスタとピッツァを頼んでシェア」が定番ですが、
イタリアではほとんど見られません。

パスタは一人分ずつ盛られて提供され、
お互いの皿を交換して食べることもまずありません。

「自分の皿に他人のフォークが入る」ことを
イタリア人は少し不快に感じることもあります。

ただし、例外もあります。
アンティパスト(前菜)やセコンド(肉料理)など、
シェア前提のメニューでは自然に取り分けて食べる文化があります。

シェアするのは“取り分け前提の料理”だけ

例えば、

  • 前菜の盛り合わせ(Antipasto misto)
  • ステーキ(Bistecca alla Fiorentina)
  • 大皿の魚料理(Pesce al forno)

こうした料理は「みんなで取り分ける」ことを前提に提供されるため、
取り皿が一緒に出てきます。

イタリアでは「シェアする料理」と「シェアしない料理」がはっきり分かれています。
例えば、フィレンツェ名物のTボーンステーキ(ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ)
一皿の量が300グラム〜500グラム以上あることも珍しくなく、
さすがのイタリア人でも一人で食べきれないため、自然と取り分けて食べます。

また、イタリアでは食事の構成も日本と少し異なり、
プリモ・ピアット(1皿目)でパスタやピッツァを食べ、
セコンド・ピアット(2皿目)で肉料理や魚料理を楽しむのが一般的。
そのため、取り分けが生まれるのは主に“セコンド”のボリュームのある料理に限られます。

つまり、シェアは「大皿を分け合う文化」ではなく、「特定の料理で自然に起こる行為」なのです。

エピソード:息子とピッツァを頼んだ時の話

うちの息子はピッツァが大好きで、自分で1枚をペロリと食べてしまいます。
日本のピッツェリアで一緒に行ったとき、
息子がマルゲリータ、私が別のピッツァを注文しました。

ところが、店員さんが1枚ずつではなく、1枚だけを中央に置いてきたのです。
どうやら「シェア前提」だと思われたようです。

そこで私はこう伝えました。

「シェアしません、それぞれ1枚ずつお願いします。」

すると、2枚目のピッツァを温かいまま出してくれました。

このやりとりを通して改めて感じたのは、
“一人一皿文化”がイタリアの常識であり、日本では例外的だということです。

なぜイタリア人はシェアしないのか?

イタリアでは「食べること=個人の楽しみ」「集中の時間」という価値観があります。
料理はアートであり、ひと皿ごとにシェフの意図や味の構成が完成している。
だからこそ、一皿を“分けてしまう”のは不自然なのです。

心理的にも、「自分の分を味わうことが尊重される文化」なので、
シェアしない=冷たい ではなく、
“相手を尊重している”という考え方でもあります。

例外:デザートやコーヒーは共有OK

不思議なことに、食事ではシェアしないイタリア人も、
デザートやコーヒータイムでは「一口ちょうだい」「これ美味しいよ」と自然にシェアします。

これは“食後=社交の時間”だから。
メインを食べ終えてからのカフェやドルチェは、リラックスして楽しむ場。
その切り替えこそ、イタリアの“食の哲学”を感じさせます。

まとめ|“シェアしない”のは冷たいからじゃない

イタリア人が料理をシェアしないのは、
「自分の時間」「味の完成度」「文化の誇り」を大切にしているから。

ピッツァもパスタも“ひと皿の作品”。
だからこそ、1人1枚をしっかり味わうのがイタリア流のマナーです。

日本人の「分け合う美徳」も素敵ですが、
時にはイタリア流に“自分の一皿に向き合う時間”を持ってみるのも良いかもしれません。

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この記事を書いた人

イタリア車と暮らし、イタリアの“美しい生き方”を伝える
アルファロメオやフィアットなど、イタリア車に15年以上乗り続け、デザインと走りに魅了されてきました。
内装や電装品のDIY整備も行う実践派で、日常の中で“イタリア流の情熱”を体感しています。

イタリア・フィレンツェで3年間学んだ芸術と食文化の経験をもとに、
情報サイト「SOLENTIA」で“本場の美学とリアルなイタリア”を発信しています。

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